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  2003. 4. 9

  <さらく>の航海日誌


4月 9日
9時 北緯0度79分東経152度00分
晴 1011hpa 32℃ 西の風6m 艇速6Knot 針路330度


赤道通過記念仮装大会
赤道のカウボーイ


テーマなし、赤道はあっちだ
 7時55分赤道通過。 メルボルン出航以来23日目。 これまでに走った距離2,900マイル。 大阪まで最短距離で2,340マイル。 よくここまでやってこられたと自分でも思う。 しかし、まだ中間点にすぎない。 気を引き締めて行きたい。 

 昨夜はワッチの時に叩き付けるようなスコール。 目を開けて居られないほどの雨だった。 これは、南半球にもう来るなということか、それとも水をやるからまた来いという天の声か。 
 先日の雷雲の下では風は大したことがなかったが、猛烈な雨でバケツを出して置いたただけで40リットルも水が採れた。 それ以来雨男になってしまった。 

 一昨日夕方のロールコールでブーツ(Boots)を追い抜いたことを知った。 
いつも位置の報告だけをするブーツが珍しく雷雲と無風に悩まされていると話していた。 さらくも少し離れた場所にいたらもっと散々な目にあっていたかもしれない。 昨日は、既に60マイルもこちらが先行していた。 ブーツの安航を祈りたい。 

 昨日はソーラーで発電した電気がバッテリーに来ていないことが判明し調べたら断線しているようなので電線を交換した。 スターンの狭いラダー室に潜りこみ、配線をしなおすのに一時間くらいかかった。 これでバッチリ充電できるようになったので安心だ。 
 エンジンがエアをかんで止まってしまうので今朝2時ごろ武田くんがエンジンの所で調整しながら1時間回した。 夜間は、充電のために30分はエンジンを回していたいが二人がかりやっと回している状態だ。 

 今はストームジブとフルメインで走行中。 おかしな組み合わせだがファーラーが使えないのでゼノアかストームジブかという両極端になってしまう。 さらく(J37)は、ダウンウインドの時スピードが出る船なのでストームでも風向きによっては6〜7ノットは出せる。 しばらくは、これで先行するヨットに離されないようにして行きたい。 
 これからは同クラスのルイーズ(Louiseオーストラリア艇)が目標だ。 

 追い抜いた時の写真をと言われたが、広〜い海のこと競争相手は遥か彼方で見ることはできません。 そこが外洋ヨットレースの寂しさ。 
 ヨットの上から眺めることができるのは、せいぜい周囲四五マイル範囲なのです。 
 無線で競争相手の位置を知って抜いた抜かれたと一喜一憂することしかできないのが外洋レースの宿命です。 でも、ちょっと気を抜いていると後ろから追いつかれるし、速く走らせる様に努力すれば遥か彼方の競争相手にもいつか追いつくチャンスがある。 大自然も相手だし、僕たちは決してノンビリと走っているわけではないことは強調しておきたい。


ENTRY No.16「SALAKU」
レース艇の現在位置


  <LULU>のホームページ

 日本から参加の<LULU>の近況は、Team LULUのホームページで見ることができます。 <LULU>からは、イリジウムを使って日本のクルーに連絡が入り、近況がホームページに掲載されます。

 <LULU>は4月4日に赤道を通過し、大阪に向けて順調に走っているようです。

 ホームページには英語版も用意されています。



> Team LULU( http://www.lulu-jp.jp/race.htm )
> 英語版( http://www.lulu-jp.jp/racee.htm )

ENTRY No.22「LULU」
レース艇の現在位置


  ファイン・トレランスからのレポート


Day 24

 昨日と同じように、風は午後になってから息を吹き返し、私たちは再びスピネカーで走り始めた。夜の定期無線では<浪速>が更にリードを伸ばした(194海里)ことを聞かされ、私たちのような木造のスプーナーの宿命は決まってしまったようだと思った。 彼らは私たちよりも300海里近く東寄りに居て、その海域はこことは全く違う、私たちをぶっちぎるコンディションなのだろう。

 ずっと静かなこちらのコンディションは、風は0.5〜6ノットなので、私たちは夜間も殆どスピネカーを揚げたまま艇速1〜2ノット、少し風が強まれば4ノットくらいで走った。

 日の出前、風が強まって風向は南寄りに変わった。 北側に大きく広がるリーフがあって、それ以上スピネカーを揚げておくことができなくなった私たちは、ヘッドセイルとメインの2枚でリーチングを始めた。 夜明けには、私たちはウンボイ島の下の先端にある小島からほんの数マイルのところに居て、風は東から15ノット吹いていたので、ビーチャジ海溝を抜けてから日本がある北の方角へ舵を切った。 ここから大阪までの方位と距離は342度、2525マイルなので、まだまだ先は長いが、アドミラルティー島をよけるとき以外は、日本まで一直線だ。 もちろん風がちゃんと吹けばの話しだが。


ENTRY No.15「FINE TOLERANCE」
レース艇の現在位置


  ファンネル・ウェブからのレポート


4月9日

 また一日が過ぎたが、状況は変わらない。 自艇のエクイップメント、特にセイルに慣れていないという問題が依然として大きい。 いつ使うべきか、限界はどこなのかをまだ把握できていない。 だから、変動的なコンディションのときに、「とにかくやってみよう」という気が起きないのだ。 これが何マイルものロスになる。 だが、「モンスター」を使ったときは、必ずそれだけの見返りはある。 

 天気は変わりやすく、いついい風が吹き始めるのか、嵐が吹き荒れるのか、雷雨になるのか、見当もつかない。 セイルの揚げ降ろしは大変な作業で、特に僅かな風を掴むのにセイルが小さすぎたり重たすぎたりで苦労する。 

 ときにはイヴァンが私を叱咤激励し、逆のときもある。 しっかり食事を摂ることと精神力は直結しているようで、私がホイールに着きながら、ウィンチを使ってハリヤードを引いたりしていても、イヴァンにしてみれば、大きなセイルがリグの合間で暴れはじめたときにフォアで本当の「モンスター」と戦わなくてはならないのは自分だと感じるらしい。 実際、風が180度、または360度も回ってしまうようなとき、つまり船首を風上に向けることが無意味なとき、イヴァンの二本の腕が機能する状態で無事に残っていることが不思議なくらいだ。 

 たった今まで風速2ノット(殆ど無風)だったのに、次の瞬間には20ノットになって、激しい雷雨を伴う嵐になったりする。 そんな状況は、日中の明るいときなら対処できるけれど、暗闇の中では本当に危険だ。 昨夜襲ってきた嵐で、ヘッドセイルのカーの前部をもぎ取られたし、その他のギアも壊された。 こんな嵐を他で見たのは、「メッセージ・イン・ア・ボトル」という、ケビン・コスナーが一組のカップルと子供を助けて最後には溺れてしまう映画の中だけだ。 突然嵐に見舞われて、ろくにステアリングもできない状態で艇が上下左右に押し倒されるようなとき、こういう映画のイメージがしばしば私の頭をよぎる。 

 私たちの今の目標は、この滅茶苦茶な天候の海域から抜け出し、ロスした距離を取り戻すことだ。 先頭グループは、緯度6度以降から前進の勢いがついたことが見て取れる。 この海域では、昼か夜かによって、高い水温と冷たい空気またはその逆が互いに戦っている状態だ。 それぞれの要素の筋力テストをしているようなもので、どの現象も予想したり、コントロールすることはできない。 

 あと3日くらいでトラック諸島とグアムを通過することを目指している。 私は常々、トラック島やグアムの海で難破船探索のダイビングをしたいと思っていた。 いつか急いでいないときに、やってみたいと思う。 そこは世界中でも最も綺麗なダイビング・スポットだと聞いている。 フィリピンのパラワン島やコロン湾も素晴らしかったことを思い出す。 日本のWWIIの難破跡に潜って、この巨大な構造物の中で迷子になったときのことや、40メートルの深さのプロペラ・シャフトまで100メートルも潜って、ボイラーだらけのエンジン・ルームに辿り着いてしまったこと、どこかタイタニックに似ていたことなどは決して忘れない思い出だ。 今日、日本はその海域にたくさんの真珠養殖場を持っていて、現地の船外機付きのカヌーでレースしていてオイスター養殖場の上を通過するとき、マシンガンを持った日本の警備員を見かけることも珍しくなかった。 

 今夜は艇速7ノットくらいでレースを再開する。 レースを再開というのは、それまでは一日中1〜2ノットくらいしか出ていなかったからだ。 但し、イヴァンが寝ている間に嵐が来て、その先端の風を掴んで9.4ノットくらいで1時間半くらい調子よく走ったときを除いては。 ホイールを握っていて、セーリングとはこのことだと思った。 1ノットでも2ノットでも速く走ろうとセイルを出し入れしながら、ヴァンデ・グローブに出たエレン・マッカーサの気持ちが分かるような気がした。 なんとも言い得ぬ制圧感がある。 この快感のためなら死んでもいいと思うような。 自然と一対一で向き合っている感覚。 

 「モンスター」を揚げているので今夜は嵐が来ないことを願う。 嵐が来たならてんてこ舞いしなければならないが、先頭グループがどんどん先に行ってしまうのを目の当たりにして、私たちはほとほと幻滅しているのだ。 こんな中で精神力を保つのは容易なことではない。 その上、食べ物は悪夢と化している。 かび臭いビスケットやイワシの缶詰にはうんざりだ。 私は食べ物のことを夢見るようになっているし、二人とも体重の減少が問題となりつつある。 こんなことなら、全てのコンパートメントに食べ物が散乱しているほうがずっとよかった。 もっと長持ちしてくれると思っていた食べ物は、塩水に浸かってダメになってしまったし。 海が荒れたときは、食べ物などあっという間にダメになってしまう。 レースが始まって1週間で既に、長期保存用の食料に手をつけてしまった。 その他の新鮮な食べ物は全て捨てなければならなかった。 

 だから二人は戦艦で戦う戦士のように、夜や未知の境遇と戦い続けるのだ。 それでも恐れることなく、経験から学んだことを次のレースに役立てるつもりだ。 私がいつも言うように、いい艇が優勝するのではない。 先頭艇のクルーたちのように、経験に勝るものは無いのだ。 

 それと、イヴァンが言うように、私が女性であることも大きな違いだ。 いくら私が同じように働き、同じようにステアリングして、同じ時間を費やし、同じかそれ以上のエネルギーを持っていたとしても、恐れずにマストに登っても、先頭艇の二人の男と同じ筋力はないのだ。 それが世の常ってものだけどね。 

<ファンネル・ウェブ>、シビー

ENTRY No.20「FUNNEL WEB」
レース艇の現在位置